今から70年以上も前、テレビが普及し始めたばかりの頃、社会評論家の大宅壮一によって生み出され流行語にもなった「一億総白痴化」という言葉を聞いたことがある方多いいんじゃないかと思います。
実際にテレビによって白痴化が進んだかどうかは定かではないですが、昨年2019年に文字の読めない人の認知症発症リスクは「年齢」「社会的地位」「心血管系疾患」といったリスク要因を調整した上でも、文字を読める人と比較して2倍に上るとの研究が改めて発表されました。これはコロンビア大学のDr.Manleyによって983人を対象に平均4年に渡って行われたもので、調査開始時に平均77歳の対象者たちは、4年後、文字が読めるグループでは27%、文字が読めないグループでは48%が認知症を発症したとのことです。
この調査からは、文字の「読める」「読めない」の能力差か、「文字を読んでいる」「読んでいない」の習慣の差のどちらがリスクと結びついているのかはわかりませんが、神経学的観点からすると、受動的なテレビ視聴等よりは、「読み」「理解し」「イメージする」といった能動性が必要とされる読書等の方が脳へ刺激を送り、活発に保っているのではないかと思います。アメリカ教育省によると、アメリカ国民の5分の1が情報の「比較」「言い換え」「簡単な引用」に足る読解力がないとのことです。日本は識字率こそ100%に近いですが、最近は読解力の低下が問題とされていることから人ごとではないと思います。今後5Gが導入され、動画の利用率が増えることに比例し、読解力の低下や認知症の発症率の上昇が懸念されます。自分自身、ながらでのyoutube視聴をすることも多く便利ですが、今後も本や新聞等、活字も読んでいきたいと思います。
参照:Illiteracy may triple dementia risk