ビタミンD摂取でインフルエンザや新型コロナウイルスの感染や重篤化のリスクが低下する科学的根拠

以前から冬季に風邪やインフルが増える要因として血中ビタミンD濃度の低下による免疫力の低下ということを上げていました。最近は日本でもテレビ等でビタミンDが免疫強化に重要な役割を果たしていることが報道されることが増えてきましたが、まだまだ一般的に浸透していないのが現状でしょう(新型コロナのことで予防策としてビタミンDが触れらているのは全く目にしません)。そこで現在世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス “COVID-19″に対しての予防と重篤化の軽減という観点からもビタミンDは重要な要素であると考える科学的根拠について、この4月に出たばかりの論文を基に述べていきたいと思います。⑴

専門的な用語も用いてますが、わからない単語に関しては読み飛ばして頂いて、概要を把握頂けますと幸いです。それぞれの詳細に関しましては、参照をご確認ください。

ビタミンDが免疫を強化するメカニズム

通常ビタミンD3は日光に含まれるUVBと呼ばれるタイプの紫外線が皮膚に当たることで合成され、肝臓で25(OH)Dに変換されたのち必要に応じて各臓器でホルモン等に合成されます。代表的なホルモンであるカルシトリオールは血中カルシウムの調整を担っていますが、その他に様々な生理機能に関与していることがわかっています。以下、ビタミンDが、これまで感染したことのない抗原に対して有効な先天性免疫を強化すると考えられる3つのメカニズムです。

①細胞間の密着結合によるバリア機能の維持

細胞と細胞の隙間を繋ぐ密着結合があることにより、物理的に有害物質の侵入を防いでいますが、ビタミンDはその密着結合を維持する役割を持ちます。⑵⑶

②抗微生物ペプチドの生産

抗微生物ペプチドは上皮組織や血中の食細胞によって産生され、細菌、真菌、ウイルス等幅広い抗菌作用を発揮します。カテリシジンやデフェンシンと呼ばれる抗微生物ペプチドの産生にビタミンDが関わっています。⑷⑸

③サイトカインストームの軽減

サイトカインとはインフルエンザやコロナフイルスなどの感染症で身体の防御反応として放出される低分子タンパク質の総称ですが、今回新型コロナウイルスを排除するための過剰な免疫反応であるサイトカインストームが重篤な呼吸器障害をおこしていることがわかっています。ウイルスや細菌感染において炎症を「促進」するサイトカインと、「抑制」するサイトカインが体内で産生されます。ビタミンDは炎症を促進するTNF-αやインターフェロンγ含むTh1サイトカインを抑制することでサイトカインストームを軽減します。⑹

ビタミンD合成に関わるUVBの多い国では感染と死者数が抑えられている

以前に書いた記事で述べましたが、紫外線には UVAとUVBの2つのタイプがあります。体内でのビタミンD産生に必要なのはUVBというタイプの紫外線で、冬季や夏季でも緯度の高い地域においては日光に含まれません。そのことが、冬季に免疫力が落ち風邪やインフル感染が増える要因とされています。

今回の新型コロナに関して4月16日現在、世界中の感染状況を見たときに、南半球諸国(オーストリア・ニュージーランド・南米等)や北半球の緯度の低い国・地域(東南アジア諸国)の感染者、死者数は北半球の緯度の高い国・地域(ヨーロッパ・ニューヨーク等)と比較すると断然抑えられています。

これから冬に入る南半球諸国は今後が心配ですが、これまでの状況から血中ビタミンD濃度と新型コロナの感染・重篤化に相関関係があるのではないかと推測できます。その他の要因としてBCGの摂取率の違いということも上げられていますが、まだこちらの方は根拠が乏しいということから、WHOや日本ワクチン学会は現状では推奨していないとのことです。

ビタミンDに関しても新型コロナウイルスに特化した臨床試験が行われていない為、新型コロナウイルスに効くとする根拠は弱いですが、これまで判明してきた感染全般に対する免疫への関与から、科学的根拠があり、過剰摂取を除けば副作用も極めて稀で、比較的安価なので手軽にお試し頂けるんじゃないかと思います。

Johns Hopkinsより

最適な血中ビタミンD濃度を保つために

これからの時期は何よりUVBの含まれる日光に1日に15〜20分でも当たっていただくことが一番です。なので、自粛自粛で家にこもりっぱなしになるのではなく可能であれば散歩がてら日光浴をしてみてはいかがでしょう。室内にこもりっぱなしだと、コロナは防げたとしても、他の健康面での悪影響が心配されます。

今回の自粛要請のような状況的、環境的にそれが難しい場合や、UVBの減少する秋から冬にかけてはサプリでの摂取をおすすめします。最適な摂取量に関しては画一的に決まっているわけではありませんが、血中濃度40-80ng/ml(100-200 nmol/l)を保つことが推奨されています(日本で行われた研究では50 nmol/l以上が46%、75 nmol/l以上が10%未満)。⑺

とはいえ、いちいち血中ビタミンD濃度をモニターしながら摂取量を調整するというのも現実的ではないので、とりあえずはサプリの容器に記載の容量通りで良いと思います。ビタミンDの場合よほどでなければ毒性はないとされていますが、どんなものであれ過剰摂取による副作用はあるので常識の範囲内で摂取しましょう。研究によっては10,000 I.U.でも許容範囲だというものもありますが、一般的なサプリでは1日あたりの摂取量が1錠1000I.U.から5000I.U.というものが多いので基本的にはその用量通りの摂取で良いでしょう。

結論

今回ビタミンDが免疫機構に関与するメカニズム、新型コロナにも影響していると推測する理由、ビタミンDの摂取方法に関してお話しました。ビタミンDの風邪・インフルエンザ・急性呼吸器感染症に対する有効性を実証するランダム化比較試験の内容も無料で全文公開されていますので、興味のある方は下記リンクよりご確認頂ければと思います。⑻⑼⑽

では、これまで通り可能な3密は避け、手洗いうがい、健康的な食事、運動、睡眠を気をつけて頂いた上で、科学的な根拠の強いビタミンD濃度を上げるよう日光浴でもサプリでも各自状況に合わせてぜひお試し頂いてこの困難乗り切っていきましょう。

参照)

Evidence that Vitamin D Supplementation Could Reduce Risk of Influenza and COVID-19 Infections and Deaths

細胞間接着装置タイト結合と生体防御

A review of the critical role of vitamin D in the functioning of the immune system and the clinical implications of vitamin D deficiency

インフルエンザに対する免疫力の検証 ビタミン D と先天性免疫とインフルエンザの関連

Cathelicidin impact on inflammatory cells

Effect of single‐dose injection of vitamin D on immune cytokines in ulcerative colitis patients: a randomized placebo‐controlled trial

日本人のカルシウム摂取とビタミンD

Self-Care for Common Colds: The Pivotal Role of Vitamin D, Vitamin C, Zinc, and Echinacea in Three Main Immune Interactive Clusters (Physical Barriers, Innate and Adaptive Immunity) Involved during an Episode of Common Colds—Practical Advice on Dosages and on the Time to Take These Nutrients/Botanicals in order to Prevent or Treat Common Colds

Randomized trial of vitamin D supplementation to prevent seasonal influenza A in schoolchildren

Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data

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