女性に限定されるかと思いますが、ピルを摂取したことはありますか?15歳〜19歳の性経験のある女性の半数以上がピルを摂取している(その内3分の1は生理痛の緩和や生理周期のコントロール、ニキビの治療に用いている。)アメリカと比較して、日本人のピル摂取率は5%以下と言われています。しかし最近では日本でも、上記にあるように、避妊のためだけでなく、生理痛の緩和や、生理周期のコントロールのためにピルの摂取を推奨する医師も多いことから、あまり知られていない副作用について最近の研究結果を元に紹介します。
一般的なピルについての認識
少しネットで調べてもらえたら、ピルのメリット・ベネフィットとリスクについて書かれているサイトをたくさん見つけることができます。基本的には
メリット・ベネフィット
・避妊失敗率の低さ
・生理周期のコントロール
・生理痛の改善
・ニキビの改善
・生理不順
・PMS(月経前症候群)の改善
・卵巣がんのリスク低下
・子宮体がんのリスク低下
リスク
・不正出血
・吐き気
・血栓症
といったことが出てきます。血栓症以外だとリスクに対してメリットが随分大きいように感じるのではないでしょうか。血栓症に関してもその他のリスク要因(喫煙、高血圧等)に当てはまらないようであれば心配する程ではありません。それでも日本において摂取率が少ない理由として
①入手には処方箋がいる(多くの先進国はピルはドラッグストアでも入手できる)
②偏見が多い
といったことがあるようです。これらメリット・ベネフィットとリスクのバランス、摂取率が少ない理由を踏まえた時、ピル摂取推進の動きがあっても不思議はありません。
新たに提起されているリスク
しかし上記のリスクに関してはどれも短期的なもので、長期的なリスクについてはこれまで取り上げられてきませんでした。今回、2019年8月に発表されたばかりの研究ではこの長期的なリスクの一つについての調査で、青年期におけるピルの摂取によりうつ病のリスクが上昇することが述べられています。
内容としては青年期にピルを摂取し始めたグループ、成年になって摂取し始めたグループ、ピルを摂取したことがないグループ、計1,236人を対象に調査しました。結果、性行為を始めた年齢やその他のうつ病の関連していると考えられる要因とは関係なく、青年期でピルを摂取始めたグループは、他の2グループより2〜3倍近い割合で罹患していたとの報告がされました。
原因としては低容量ピルの摂取によりホルモンバランスが変化することで、脳の発達に影響が起こるとされていることが考えられます。実際に過去の動物実験では関係性が示されました。日本において中高生が避妊の選択肢としてピルをあげることは考えにくいですが、大学生にもなれば増えてくるでしょうし、20代前半までは脳の成熟が続くとされていることから、やはり若年期における摂取は事前のリスクを把握した上で選択すべきだと思います。
この問題に限らず、全ての医療、健康に関する選択はそのメリットとリスクを天秤に掛けメリットがリスクを上回ると考えられた際に選択されるべきですが、それは個々人の状況や価値観によっても異なるため、専門家に意見をもらうことも大事ですが、それら両面を知った上で最終的に各々が判断することが重要です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31461541
Crone, E.A., & Dahl, R.E. (2012). Understanding adolescence as a period of social–affective engagement and goal flexibility. Nature Reviews Neuroscience, 13, 636– 650.
Jones, R.K. (2011). Beyond birth control: The overlooked benefits of oral contraceptive pills. New York: The Guttmacher Institute.