野球選手、特に投手にとって肘や肩の故障は選手生命を脅かします。
多くの日本人メジャーリーガーがそれらの故障に苦しんできましたが、それは一概にむこうのプレー環境だけが原因ではありません。
野球選手に限らずスポーツに関わる怪我の大きな要因の1つが「過去の怪我」です。
人間の身体がダメージから回復する過程で、元の筋肉、靭帯、軟骨などの組織にまじって瘢痕組織というものが出来ます。それは死んだ細胞の代わりに他の細胞同士を繋ぐ役割を果たしますが、瘢痕組織が混じった部位は負荷に対してもとの組織よりももろくなります。そのことがいわゆる、「怪我が癖になる」要因の一つになります。
そこでまず大事なのは大小関係なく、故障の予防ということになります。競技不能になるような大きい故障でなくても、痛みがほとんどないようなものにも注意が必要です。特に子どもは骨も靭帯も筋肉も成熟しておらず故障し安い事から、本人だけでなく、保護者や監督者が変化に気付いてあげることが大きな故障の予防になります。
前述の通りメジャーでは肘や肩の故障が多く、松坂大輔選手、藤川球児投手、ダルビッシュ有選手など錚々たるメンツが肘の故障からトミー・ジョン手術(損傷した肘の靭帯を切除し、身体の他の部位から靭帯や腱を移植する手術)を受けています。損傷の原因として、投球フォームの問題、球種による影響、登板間隔の問題などもあげられていますが、やはり重要な問題として若年時からのダメージの蓄積があります。このことは以前から問題にされてきましたが、2014年にはMLBと米国野球連盟が18歳以下のアマチュア投手を対象にした故障防止のためのガイドライン「ピッチ・スマート(PITCH SMART)」を発表しました。このガイドラインに沿うことにより若年時からのダメージの蓄積を減らし、長期間高いパフォーマンスを発揮することにつながるのではないかと思います。
以下が年齢別の投球数毎の休息期間をまとめたものになります。
日本の高校野球でこのガイドラインに完全に沿うのは正直難しいかもしれませんが。
チームの戦力と選手の将来。指導者の方はジレンマを感じながらも、バランスを考えこのガイドラインを参考に判断していただければと思います。